織絵屋のブログ
12/27: 幻の染と呼ばれる『竹かご染』
織絵屋の松山です。染色技法には様々な種類がありますが、今回は「竹かご染」について述べます。「竹かご染」は「かご絞り染」とも呼ばれています。
この技法は、格子状に編んだ四角のカゴに、白生地を詰めて染め、独特のぼかしや不規則な模様を生み出す伝統的な染色技法です。
まず、カゴに白生地をくしゃくしゃにして詰めるのですが、職人の指の感触だけで均等に詰めます。
次に、詰めた白生地の上からジョウロで染料をかけ、一気に染めず、徐々に染料を染み込ませていきます。

その後、生地を詰め直しながら染色を繰り返します。
すると、竹かごに当たる部分と当たらない部分で、色の抜け方が異なるので絶妙なムラ(グラデーション)が生まれます。同じ柄は2点とないのが特徴です。
さらに、染まった生地の上から別な色で25回も繰り返し染め、万華鏡のような柄になるモノもあります。
ただ、現在では「竹かご染」ができる職人は極めて少なく、めったに見られない幻の染と呼ばれています。
11/25: 使える「お召(おめし)」って、なあに?
織絵屋の松山です。今回は「お召」について述べます。
お召とは、糸を染めてから織り上げる「先染め」の着物です。緯糸に強い撚りをかけた糸を使うことで、コシが強く、シワになりにくいという特性があります。
「お召」という名称は、今、放映中のNHK大河ドラマ『べらぼう』にも登場している第11代将軍・徳川家斉がこの織物を好んで着用し、「御召料」とされたことに由来します。

当初は貴族や武士に愛用されていましたが、やがて庶民の間でも晴れ着として広まりました。
明治・大正時代には、お召は女性の憧れであり、矢絣のお召しに海老茶の袴を合せた女学生スタイルが大流行しました。

戦後、お召の人気にあやかった人絹お召やウールお召などが大量に生産され、お召は敬遠されるようになり、一気に衰退してしまいました。
しかし、現代でなって、お召は丈夫で着くずれしにくく、裾さばきが良いことから、おしゃれ着としても人気があり、近年、復活してきました。
お召は先染めの着物ですが、色柄によっては高い格を持ち、お茶席や結婚式でも着用できます。
単衣にしても、袷にしても着用でき、軽くて着心地が良く、シワにもならず、また格式や老若男女にもとらわれない等、とても使い勝手の良い着物です。
10/30: 着物って、とってもエコでSDGsなんです!
松山です。30年以上前、石川英輔という作家の大江戸神仙伝シリーズ本に出合い、江戸時代が好きになりました。
氏は著書「大江戸しあわせ指南」の中で、着物は直線裁ちで無駄がなく、また再利用が簡単にできる非常にエコな衣だったと説いています。
私は普段は木綿や麻、テンションを上げたいイベントなどの時は絹の着物を着ています。
天然繊維の木綿や麻は水で洗えるので、体にも環境にも負荷をかけません。6、7年着て、汚れや変色が気になれば、裏返しに仕立て直し。着なくなったら作務衣にリメイクして作業着にして着ています。
絹の着物は、汚れが気になったら、少し濃い目の色を掛ければ別な色の着物に生まれ変わります。また、数年着て裾が切れたら、洗い張りに出し、仕立て直ししています。何度か裾切れすると丈が足りなくなるので、同じように丈の足りなくなった着物と二枚を組み合わせパッチワークの着物や羽織、陣羽織に仕立て直しています。
余った端切れなどは、洋服やバッグ、また、ランチョンマット、コースターなどにリメイク。
最後は絹の雑巾に。刺し子などで補強し、雑巾として使ってみると、驚くほど汚れが良く落ちます。
あなたも着物でSDGsに参加しませんか?。
10/06: 菱屋善兵衛 明治、大正の帯 復刻物語
織絵屋の松山です。今回は明治大正時代の帯を復元した京都西陣の老舗機屋「菱屋善兵衛」について述べます。
創業220年を超える西陣・菱屋善兵衛は、20年ほど前に、創業200年記念の帯を製作する企画が持ち上がりました。
何か参考になる資料はないかと古くからある蔵を整理中に、明治、大正時代に製造していた帯地や図案、小裂などが見つかりました。当時は、まだ無名だった上村松園や菊池契月、木島桜谷などそうそうたる画家たちが描いた図案もあった。
これらの帯地を復刻することに決まったのだが、復刻は簡単ではなかった。明治大正時代の帯は、糸の品質、糸の込み具合、ジャガードの細かさなど「これほどまでにすごいとは!」と職人たちは驚いたという。
しかし、彼らはあきらめなかった。その帯地の柔らかな風合い、手触り感、また軽さを現代に蘇らせるために研究に研究を重ねた…一番の問題は絹糸だった。現代の絹糸では復刻することは不可能だったのだ。
一時は不可能とあきらめそうになった復刻を可能にしたのが、あの世界的ブランド・エルメスが使用する「ブラタク糸」という絹糸だった。
その最高の絹糸を緯糸に使い、通常の倍の密度で織り上げました。職人たちが図案、素材、配色のすべてを吟味し、3年の歳月を要して完成。

10月18日から20日の「44歳の誕生祭」でお披露目します。
09/05: 新感覚の伊勢型小紋を生み出した男
織絵屋の松山です。伊勢型小紋(および江戸小紋)の染工程を簡単に説明します。
➊板に貼った白生地の上から、文様が彫られた伊勢型紙を使って糊を置いていきます(白生地にくっ付いた糊部分は染まりません)。❷その上から色糊(染料を混ぜた糊)で染めていきます。❸色が定着するように蒸します。➍最後に水で洗い流すと、最初に置いた糊部分が白い文様として浮かび上がってくるのです。
京都に「染処 古今」という伊勢型小紋の染工房の現社長・安江氏は、中卒でこの染工房に入り、修行。あまりの大変さに、実家に逃げ帰ったこともあったそうですが、母親や伊勢型紙・錐彫りの人間国宝「六谷梅軒」の励ましで一人前の染職人になれたそうです。

安江氏は、何百年と続く伝統的な伊勢型小紋に新しい工夫を取り入れたいと考えていて、前社長に他の染工房での修行を申し出たそうです。
安江氏が新たに修行した染は草木染でした。草木染の修行を終え、「染処 古今」に戻った安江氏は、伝統的な技法で染めた伊勢型小紋に草木染料を重ね染めするという新感覚の伊勢型小紋を完成させたのです。
とてつもない技術が必要な伊勢型紙の彫り職人と染め職人によって完成した小紋に、さらに、草木染を施すことで、着る人の顔が一層映えるのです。9月4日~6日まで、安江氏が織絵屋で文化講演してくれます。
