織絵屋のブログ
November 2024のブログ記事
11/27: 織物の宝石と呼ばれるビロード織とは
織絵屋の松山です。今回は「ビロードのような手触り」「ビロードのような舌触り」など、なめらかさの最上級の比喩の言葉にも使われ、織物の宝石と呼ばれるビロード織について述べます。
ビロード織は13世紀のイタリアで発祥し、あっという間にヨーロッパの貴族たちを魅了していきました。
日本には、ポルトガルから輸入された鉄砲を包んでいた布として、初めて伝わりました。
その織り方は秘密でしたが、細い銅線が残ったビロードの布が発見されたのを機に、その織り方を解明し、早くも江戸初期には西陣で織られるようになったそうです。
日本の匠、おそるべしですね。
ビロード織は「輪奈織」とも呼ばれ、経糸の一部を浮かし、その部分に針金を緯糸として織っていきます。
織り上がった生地から針金を抜くと、タオル地のようにパイル状(糸が飛び出した状態)になります。
そのままのモノを「輪奈ビロード」と呼び、パイルの頭部分を切ったモノを「切りビロード」と呼びます。
ビロード織は、大正から昭和の初期にかけて、羽織やコート、ショールの生地として重宝され、女性があこがれる織物でした。
しかし、戦後はその織り方の難しさから撤退する機屋が増え、現在では1社のみになっています。
上品で、軽くて暖かい「輪奈ビロード」のコートは、北国の女性には1枚は持って欲しいコートです。
11/12: きもののお直し業「悉皆業(しっかい業)」とは?
織絵屋の松山です!今回は、下記のようなお悩みを解決してくれる「悉皆業」について述べます。
「母の形見の着物、若いときに自分の給料で初めて買った記念の着物、成人式に着た振袖などがある。色んな思い出があって捨てられない。」「娘に着せたいけど、シミ、汚れがあるし、寸法も足りない、好みの色じゃないかも?」「これって、どうにか活かせる方法があるの?」
悉皆(しっかい)とは「ことごとく皆」という意味です。
着物は、白い生地があり、染める人がいて、箔や刺繍を施す人がいて、また、蒸す人、洗う人、シミを取る人…など、様々な分業によって完成します。
これらの職人をプロデュースする、着物に関する全てに精通した人、つまり、オーケストラの指揮者に当たります。
また、古い着物の補正や修正、染め替えの時は、それぞれにふさわしい加工を見極め、各職人さんに指示しなければならない大変な仕事です。
このシミは、どうすれば取れるのか、取れなければ、どういう加工をすれば良いのか?元の色に何色を掛ければ、希望の色になるのか?…など、様々な問題に対処しなければならず、「悉皆(しっかい)」は「やっかい」と敬遠される仕事でもあります。
しかし、古い着物でも、加工の良いモノは悉皆によって見違えるほど素敵に再生されます。否、加工する前より良くなり、感動するお客様もたくさんいます。
例えば、母親の淡いブルーの振袖を藍色系に染め替えされたとき、その深い色に、本人もお母様もお祖母様も三代で感激しておられました。
https://www.youtube.com/watch?v=fcUuVtdFUxY
想い出があっても着られない着物を悉皆業の方にお任せして、再びスポットを当ててあげませんか?