織絵屋の松山です。今回は、常盤木(一年中、葉が青い木)である椿について述べます。

            

ヤブツバキやユキツバキなど椿は、日本が原産で、梅が中国から渡来するまでは最高の吉祥木とされていました。

 

平安時代、椿の実は油や化粧品、不老長寿の薬として重宝されていました。

 

また、古来、最も高貴な色とされていた紫を染めるのに、椿を燃やしてできた灰を焙煎剤として使用していたために、椿は貴族にとって高貴な花、聖なる花として扱われていたそうです。

 

室町時代に興った茶道の普及と共に、椿は茶花として脚光を浴び、茶道・遠州流の祖が好んだ椿文様は「遠州椿」と呼ばれています。

 

江戸時代には、椿は将軍から庶民まで広く愛好され、品種改良によって500種以上にもなったそうです。

 

江戸時代の武士は、花がぽとりと落ちるのが縁起悪いと家紋には用いなかったそうですが、古来、椿は邪気を寄せ付けない厄除けの呪木(じゅぼく)とされていました。

 

源氏物語『若菜』の帖に、椿餅(つばいもちひ)を食する場面が描かれています。これは蹴鞠(けまり)の鹿革の穢れを祓うためであり、椿の呪木としての力を信じていたのでしょうね。

 

これらのことから、着物や帯に使われている椿文様は吉祥花、厄除けとして、春だけでなく一年中楽しめる文様と言えます。

 

着物について知りたい、分からないことなど何でもお聞きください!きもの道47年の私・松山がお答えします。