織絵屋のブログ
June 2024のブログ記事
06/27: 「きもの」の語源は七夕にあった!
織絵屋の松山です。今回は「七夕」を「たなばた」と読む理由と「きもの」の語源について述べます。
七夕は、本来、「しちせき」と読むのが正しく、奈良時代に中国から伝わった五節句の一つで笹の節句とも言われます。
中国から五節句が伝わり、7月7日は「七夕(しちせき)」の節句にあたりましたが、日本ではそれ以前から7月7日は「たなばたつめ」の行事がありました。
もちろん、7月7日というのは旧暦ですので、大暑の頃になります。台風や日照りが発生しやすい頃なので、古代では、それまで順調に育った稲などの作物が台無しになることも度々でした。
そこで、雲を動かし、風を吹かせ、雨を降らせる龍神に「どうか、雨風の被害がなく、豊作でありますように!村人が幸せになりますように!」と、祈る行事が「たなばたつめ(棚機ッ女)」の行事でした。
村から選ばれた乙女が水辺のほとりの小屋で、龍神の衣装になる白絹を織り、棚に捧げたのです。
棚に捧げた白絹が「巻物(まきもの)」状だったことが「きもの」の語源となったと言われます。
日本古来の「たなばたッ女」の行事と「中国の七夕(しちせき)」が混同され、七夕は「たなばた」と読まれるようになったと言われています。
06/25: ロウケツ染の歴史
織絵屋の松山です!今回はロウケツ染めについて述べます。
ロウケツ染めの歴史は古く、飛鳥時代には、纐纈(こうけち・絞り染め)、狭纈(きょうけち・板締め染め)、蝋纈(ろうけち・ロウケツ染め)は天平に三纈(さんけち)と呼ばれていました。
ところで、布を水性の染料で直接染めると色がにじんでしまい、模様をはっきり描くことは出来ません。
これを防ぐのが防染技術です。まだ、友禅染は生まれていない古代の防染技術が上記の三纈です。
染めたくない部分を絞りや板締め、ロウで防染することによって模様染めが可能になるのです。
古代のロウケツ染め・蝋纈(ろうけち)は、蜜蝋を使っていたようですが、高価な染色法だったために平安時代には途絶えてしまいました。
室町時代から江戸時代にかけ、ロウ防染の技法で染められたジャワ更紗(バティック染)が輸入され、日本人を魅了しました。
明治時代の末期、鶴巻博士によってこのバティック染技法が取り入れられ、日本でのロウケツ染が新しく始まりました。
その後、昭和30年頃から、ロウケツ染は多くの工芸作家によってキモノにも染められるようになり、友禅染に並ぶ染め物に成長してきたのです。
ロウケツ染の魅力は、何と言っても重ね染めによる色の深さです。
06/15: 着物素材・木綿
織絵屋の松山です。浴衣に代表される着物素材は木綿です。今回は、木綿の歴史、特徴について述べます。
日本に初めて木綿の種がもたらされたのは、8世紀末と言われています。しかし、この種は高温種の木綿だったので、日本では育ちませんでした。
また、輸入された木綿は高級品でしたので、一般庶民までは普及していませんでした。
やがて、16世紀中ごろ、中国の綿種が伝わり、日本でも広く綿花が栽培されるようになりました。
麻素材より、柔らかく、保温性が高く、染色もしやすいことから庶民の貴重な衣服として急速に普及していきました。
17世紀中ごろまでには、国産の綿織物が庶民の普段着になるほどまでに普及知したそうです。
しかし、明治29年、綿花輸入関税が撤廃されると、日本国内の綿花栽培は急速に衰退していきました。
現在の主な木綿織物は、久留米絣、弓浜絣、伊勢木綿、会津木綿、片貝木綿などがあります。
木綿織物は麻素材の小千谷縮などと同じ様に自宅で洗えますので、普段着着物としておすすめです。
私は、4月から6月、9月から11月の期間は、もっぱら木綿織物で過ごしています!
06/14: 「麻」は夏の着物素材として最高
織絵屋の松山です。今回は着物素材の一つ「麻」について述べます。
江戸中期頃まで、一般的な着物の素材と言えば麻でした。日本では、古来、麻とは「大麻」と「苧麻(ちょま)」のことを言いました。
しかし、戦後、GHQにより大麻の栽培は許可制になり、現在の麻織物のほとんどが苧麻で織られています。
ちなみに、「麻の葉文様」は大麻の葉を文様化したものです。
麻の歴史は古く、縄文時代より栽培されていました。古代日本語では「あ」は始まり、「さ」は田の神を意味することから、麻は、日本人が初めて栽培した植物とも言われます。
麻繊維の主な特性は、①天然繊維で最強の強度である。②吸湿、放湿性に優れている。③接触冷感性(触れた時に冷たく感じる)に優れている。④保温性がほとんどなく、涼しい。⑤汚れが洗濯で容易に取れる。⑥シャリ感がある。などが挙げられます。
シワになりやすいという特性もありますが、霧吹きなどで水を吹き付ければ、すぐにきれいに取れます。
これらの特性から、高温多湿の日本の夏の普段着に、最高の素材と言えます。
代表的な麻織物には、越後上布、宮古上布、八重山上布、能登上布などがあります。これらは、上布は本来、献上品ですので、結構な高額品になります。
私のオススメは麻の紡績糸(ラミー)を使った小千谷縮です。緯糸に強撚糸を使い、大きなシボを出した生地ですので、汗をかいても肌に貼りつかず、サラッとしています。
また、お手頃価格なので、今年は先人たちが真夏でも快適に過ごせた秘密を体感して下さい。