織絵屋の松山です。一年中、葉が青い木のことを常盤木(ときわぎ)と呼、古来、縁起の良いものとされていました。

 

今回は常盤木の『椿』の文様について述べます。

 

 

 

椿は、日本原産の木です。梅が中国から渡来する前は、最高の吉祥木とされていました。

 

平安時代には、椿は油や化粧品、また不老長寿の薬として大切にされていました。また、最も高貴な色とされていた紫を染める媒染剤として、椿の灰汁が使用されていたそうです。

 

そんなことから、椿の花は貴族の間では高貴な花、聖なる花として扱われていました。

 

室町時代に興った茶道の普及とともに、椿は茶花として脚光を浴びました。特に、遠州流の祖が好んだ椿文様は『遠州椿』と呼ばれ、今でも、着物や帯に良く使われています。

 

そんな中、武士の間では、椿は花が首から落ちることから縁起が悪いとされ、家紋には用いませんでした。

 

 

また、同じように遊女の間では梅毒に罹患し、花が落ちる女性が多かったことから、椿文様は敬遠されていたようです。

 

しかしながら、椿は、古来、吉祥木とされ、邪気を寄せ付けない呪木(じゅぼく)とされていました。

 

源氏物語34帖「若菜」では、鹿革で作られた蹴鞠(けまり)の穢れを祓うために、椿餅(つばいもち)を食する場面が描かれています。

 

これらのことから、椿文様の着物や帯は吉祥文様、厄除け文様として一年中、楽しんで良い文様と言えます。