織絵屋の松山です。今回は「ビロードのような手触り」「ビロードのような舌触り」など、なめらかさの最上級の比喩の言葉にも使われ、織物の宝石と呼ばれるビロード織について述べます。

 

ビロード織は13世紀のイタリアで発祥し、あっという間にヨーロッパの貴族たちを魅了していきました。

 

日本には、ポルトガルから輸入された鉄砲を包んでいた布として、初めて伝わりました。

 

その織り方は秘密でしたが、細い銅線が残ったビロードの布が発見されたのを機に、その織り方を解明し、早くも江戸初期には西陣で織られるようになったそうです。

 

日本の匠、おそるべしですね。

 

ビロード織は「輪奈織」とも呼ばれ、経糸の一部を浮かし、その部分に針金を緯糸として織っていきます。

 

織り上がった生地から針金を抜くと、タオル地のようにパイル状(糸が飛び出した状態)になります。

 

そのままのモノを「輪奈ビロード」と呼び、パイルの頭部分を切ったモノを「切りビロード」と呼びます。

 

ビロード織は、大正から昭和の初期にかけて、羽織やコート、ショールの生地として重宝され、女性があこがれる織物でした。

 

しかし、戦後はその織り方の難しさから撤退する機屋が増え、現在では1社のみになっています。

 

上品で、軽くて暖かい「輪奈ビロード」のコートは、北国の女性には1枚は持って欲しいコートです。